Protective effect of bevacizumab against interstitial lung disease in non-squamous non-small-cell lung cancer: a nationwide target trial emulation study.
Iwai C et al.
Lung Cancer. 2026 Apr28; Epub ahead of print.
PMID:42081857.
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初回治療としてプラチナベースの化学療法を受けた非扁平上皮非小細胞肺癌患者において、ベバシズマブの使用とILD、180日死亡率、VTEのリスクとの関連を評価した。日本のDPCデータベース(2011-2023年)を用いて、ペメトレキセドとプラチナベースの化学療法を開始した(ベバシズマブ併用または非併用)Ⅲ‐Ⅳ期患者を同定した。ターゲットトライアルエミュレーションフレームワークを適用した。主要評価項目は、化学療法開始後180日以内に副腎皮質ステロイド治療を必要とするILDであった。副次項目には、180日死亡率、ILD発症後30日以内の死亡率、VTEとした。ベースラインの共変量を調整するために、プロペンシティスコア・オーバーラップ重み付けを用いた。Fine-GrayモデルおよびCox比例ハザードモデルを用いて、ILDおよびVTEのサブディストリビューションハザード比(SHR)、死亡率のハザード比を推定した。全体で47433名の患者が解析対象となった(ベバシズマブ群:n=12101;非ベバシズマブ群:n=35332)。ベバシズマブの使用は、ILDのリスク低下[SHR, 0.75[0.67-0.84] 、180日死亡率(ハザード比0.61[0.57-0.66])、ILD発症後30日以内の死亡率(ハザード比0.71[0.57-0.88])のリスク低下と関連していた。両治療群間で、VTEの全体的なリスクに差は認められなかった。主要な結果は、ベースライン時のプラチナ製剤の使用有無、免疫チェックポイント阻害薬の使用、年齢、ILDの既往歴によって層別化されたサブグループ間でも一貫していた。初回プラチナベースの化学療法を受けていた進行非扁平上皮非小細胞肺癌において、ベバシズマブの使用は、VTEリスクの増加を伴わずに、ILDおよび短期死亡リスクの低下と関連していた。
感想
これまで言われてきたVEGF阻害薬は薬剤性肺炎を予防できるかということをDPCベースの大規模データで検証した研究です。まずターゲットトライアルエミュレーションと耳慣れない言葉が出てきます。これは観察データから因果推論を行うための手法で、データ収集前にRCTのようなきちんとクライテリアを設定し、それをデータに含めます。これは私の浅い理解ですので、詳しくは参考文献でRも含めて解説があります。そのデータから傾向スコア・オーバーラップ重み付けを行っています。これはどちらの治療も受けられたような患者に強く重みを置くことで、極端な傾向スコアを持つ患者の影響を抑えます。これらは数があるからできることで、本研究では7万あまりのNから最終的に片群で23000あまりの症例数を作り出しています。RではパッケージPSweightで実装しています。
Fig3が主結果ですが、経時的に見てベバシズマブが肺臓炎発症を25%程度きれいに抑えていることがわかります。IPFに対するニンデタニブの例もあり、またオシメルチニブ+ベバシズマブでも肺臓炎は減っており[Kenmotsu H JTO2022 PMID:35636696]、VEGF阻害薬が肺臓炎発症を抑制することは間違いなさそうです。他に180日死亡率、ILD発症後30日以内の死亡率低下もみられ。VTEに差がないと良い結果が多いです。しかしここには除去できないバイアスが残っているような気もします。実際にベバシズマブを使う場合、出血がない、大血管浸潤がない、体力面でも十分あるといった目に見えない因子にもかなり左右されます。したがって私は「ベバシズマブで肺臓炎が減りそう」なことが確実らしいという受け止めだけにしておきます。