免疫療法後は何をしても変わらない?

Second-line treatment outcomes in patients with advanced NSCLC previously treated with first-line immunotherapy regimens.

Tompkins WP et al.
Clin Lung Cancer. 2023 Sep;24(6):558-562.
PMID:37451933.

Abs of abs.
米国では、ドライバー変異のない進行非小細胞肺癌のほぼすべてで、初回治療として何らかの形で免疫療法を受けている。現在のガイドラインでは、初回免疫療法で病勢進行が認められた場合、ICIの再チャレンジに対しては否定的である。免疫療法の再投与は、良好な毒性プロファイルと、初回治療でbeyond PDで治療された患者の臨床利益を考慮すると、魅力的に見える。初回治療後の治療における免疫療法の有効性に関する臨床試験外のデータは不足している。初回治療で免疫療法を受けた患者を対象とした大規模コホート研究において、2次治療後の転帰は2次治療で使用したレジメンの種類によって差がないことがわかった。現在の前向き臨床試験では、免疫療法継続の上での新規薬剤の追加の有用性について検討されている。今回の研究は臨床試験外のデータを提供する。加えて、術後補助免疫療法の普及に伴い、術後補助免疫療法で病勢進行がみられた場合、進行転移の初回治療として免疫療法を継続するかどうかも早急な検討が必要である。今回の解析は、その疑問について直接答えるものでないが、さらなる評価のための仮説を生み出すものである。

感想
この研究は初回免疫療法を受けた393人(393人がICI単剤、139人が複合免疫療法)の2次治療の実地データを解析した研究です。2次治療抗がん剤が436人、ICI単剤が47人、複合免疫療法が49人でした。Fig2の全生存期間はICI単独が良い傾向に見えますが、抗がん剤も複合療法も変わらずP=0.16で差がなかったとしています。補遺にあるPFSの差もなかったとのことで、これらをもって、「二次治療で使用される治療の種類によって統計的に差がなかった」としています。少々議論が乱暴ですが、ICI後の治療に何をもってきても大きくは変わらないというのは実感するところです。ただ過去にはICI後のペムブロリズマブ+ラムシルマブが良好という報告[Reckamp KL JCO2022 PMID:35658002]があり、2次治療の第Ⅲ相試験で血管新生阻害薬を加えた方がわずかによい[Garon EB Lancet2014 PMID:24933332]こともあり、ドセタキセル+ラムシルマブを推す方向にあります。難しいのは免疫療法が奏効し、いったん止めて再発した場合の再投与や、PD-L1とPD-1抗体はそれぞれ試すべきなのか、保険の縛りがありますが免疫複合療法間のスイッチングはどうなのかなど未解明な論点がたくさんあります。特に進展型小細胞肺癌で、長期に免疫療法の後に再発した場合sensitive relapseとして取り扱うべきなのか、頭蓋内再発だけの場合は維持療法はどうするのかなど実地を積み重ねて解決すべき問題が多くあるように思います。本文にもあるように、これから術前免疫療法および術後補助化学療法で免疫治療を入れてしまった場合、もはや有望なレジメンが残っていないという事態も想定されます。そのような場合、免疫療法もTKIもペメトレキセドもなかった時代のデータが再度注目を浴びるのでしょうか?FACS研究の復活も冗談ではないかも知れません。