Overall Survival with Osimertinib in Untreated, EGFR-Mutated Advanced NSCLC.
Ramalingam SS et al.
N Engl J Med. 2019 Nov 21[Epub ahead of print]
PMID:31751012
Abs of abs.
オシメルチニブは第三世代不可逆的EGFR-TKIである。初回治療としてオシメルチニブと従来のTKIとの第Ⅲ相比較試験が行われた。その試験では無増悪生存期間の延長(ハザード比0.46)が示されたが全生存期間の報告はされていなかった。本試験は556人を対象に行われ未治療EGFR遺伝子変異陽性(Del19とL858R)の進行非小細胞肺癌に対してオシメルチニブ80㎎/dayまたはゲフィチニブかエルロチニブを投与された。全生存期間は副次評価項目であった。全生存期間中央値はオシメルチニブ群38.6ヶ月[34.5-41.8]であり、対照群は31.8ヶ月[26.6-36.0]でハザード比0.80[0.64-1.00];P=0.046であった。3年経過時点において、オシメルチニブ群28%、従来治療群9%が治療継続されていた。治療期間はそれぞれ20.7ヶ月対11.5ヶ月であった。グレード3以上の有害事象はそれぞれ42%、47%であった。今回の検討ではオシメルチニブは従来のTKIに比べて全生存期間を延長し、治療期間は伸びたものの安全性は同等であった。
感想
皆様よくご存じの結果です。中間解析はアルファ消費関数をO’Brien-Fleming型に設定し、今回の有意水準を0.0495としています。今回ぎりぎり0.05を下回ったように見えますが、実際の設定では更にぎりぎりであったことがわかります。ともかくP=0.046とその水準も下回ったため有意に延長と結論できたわけです。サブグループ解析については各所でいろいろ言われています。主な指摘は、アジア人(ハザード比1.00)、非アジア人(同0.54)、EGFR遺伝子変異別のDel19(同0.68)、L858R(1.00)です。特にアジア人の生存曲線は38ヶ月辺りで交差しており、変異別では32ヶ月くらいから重なっています。後治療の問題もありますが、もう少し詳しくデータが出てこないとわかりません。しかしオシメルチニブの毒性は全体的に軽く、全体として少し良い傾向があれば使用する根拠としては十分かと思います。今後実地のデータを積み重ねていくうちに、オシメルチニブが良くない集団の仮説を出していくことが必要と思います。
さて昨日、大阪で行われている肺癌学会総会でこの試験の日本人集団での解析が発表されました。オシメルチニブ群の生存期間中央値は39.3ヶ月で、対照群は未達でした(ハザード比1.39[0.83-2.34])。しかし生存曲線は27ヶ月辺りで交差し、見かけ上オシメルチニブ群は25ヶ月辺りから急降下し対照群を下回っていました。発表者は少し前に流行った芸人のごとく”Why Japanese people…”と笑わしていました。3年終了時にオシメルチニブ22%、対象群11%が継続中でしたので長く続けられることは間違いないのですが、早々に切り替えていく方が良いのかも知れません。また同時に「日本人を除くアジア人のサブセット(サブサブセット)も出されました。それによると40ヶ月辺りで重なってしまうものの、オシメルチニブ群が一貫して上を行っていました(ハザード比0.89[0.64-1.24])。従って、最初のFLAURAの生存期間のサブセットでアジア人が良くなかったのは完全に日本人の影響ということになります。これらは統計設定に含まれない探索的解析なので、過剰反応する必要はないと思います。冷静に考えれば、既治療例でのAURA試験でも、そのような解析結果はなかったと記憶しています。ただ私のスタイルとして、全世界より日本人、その中でも診療している地域から出されたデータはより重要視する必要があると思っています。しばらくはいろいろ議論されるでしょうが、結局はこれから実地データで確かめていくべき課題となります。