検診CT一回でその後の肺癌リスクがわかる?

Sybil: A Validated Deep Learning Model to Predict Future Lung Cancer Risk From a Single Low-Dose Chest Computed Tomography.

Mikhael PG et al.
J ClinOncol. 2023 Jan 12:Epub ahead of print.
PMID: 36634294.

Abs of abs.
肺癌検診のための低線量CT(LDCT)は有効であるが、対象者であってもほとんどが検診を受けていない。個別にリスク評価ができるツールがあれば、最も恩恵を受ける可能性の高い人へのアプローチが可能となる。今回は属性データや臨床データを追加することなく個人のリスクを予測した。そしてその予測がLDCTデータを評価する深層学習モデルで構築できると仮定した。National Lung Screening Trial(NLST)のLDCTを使用して「Sybil」と称するモデルを開発した。Sybilは1回のLDCTのみであり、臨床データや放射線科所見を必要としない。また放射線科の読影ステーション上で並行してリアルタイムに実行可能である。Sybilは3つの独立したデータセットで検証した:NLST参加者からの提供の6282人セット、マサチューセッツ総合病院(MGH)の8821人のLDCT、Chang Gung記念病院(CGMH、非喫煙者を含むさまざまな喫煙歴の人が含まれる)の12280人のLDCTである。Sybilは、1年後の肺癌予測におけるROC下面積を、NLSTで0.92(0.88~0.95), MGHで0.86(0.82~0.90), CGMH外部検証セットで0.94(0.91~1.00)であった。6年間の一致指数は、NLST、MGH、CGMHでそれぞれ0.75(0.72 to 0.78)、0.81(0.77 to 0.85)、0.80(0.75 to 0.86)であった。今回Sybilは、1回のLDCTから個人の将来の肺癌リスクを正確に予測することができ、個別化されたスクリーニングをさらに可能にする。Sybilの臨床応用を深めるために、今後の研究が必要である。今回のモデルと注意点は一般公開している。

感想
1回CTを取ればその後6年の肺癌リスクがわかるというにわかには信じがたい話です。検診で見つけた結節についてのAI判別は繰り返し行われており、喫煙、性別、年齢などの背景を加えると精度が高まることが知られています。今回はまったく結節の指摘されない人も含めての話で、喫煙歴など補足データの入力も必要ありません。どのようなアルゴリズムになっているのかは知る由もありませんが、逆に人間であれば絶対に怪しいと思う影での見落としもあるかもしれません。Fig3に実例が載っており、リスクが高いとされた症例での経過が提示されています。重喫煙者であれば念のためフォローするような陰影が多いような気がします。仮に臨床応用されると、なぜかわからぬままリスクの高い肺結節と判断が出て、疑念が払しょくできないままフォローを密に行うことになり、「機械に使われる」ような未来が待っているような気がします。一方で今話題のAIである「ChatGPT」のふるまいを見ていると、AIのそれらしい答えを作る機能が相当向上しており、大したことをしていないのに人間の方がすごいと思わされているだけかも知れません。