Influence of Tumor Cavitation on Assessing the Clinical Benefit of Anti-PD1 or PD-L1 Inhibitors in Advanced Lung Squamous Cell Carcinoma.
Chen Q et al.
Clin Lung Cancer. 2023 Nov 2 Epub ahead of print.
PMID:38008641.
Abs of abs.
ある程度の扁平上皮肺癌は、画像上空洞陰影を呈する。肺癌におけるRECISTv1.1またはiRECIST基準では、病変の空洞化は考慮されない。今回は空洞化がこれらの患者における奏効評価を変えるかもしれないという仮説を立てた。PD-1/PD-L1抗体とプラチナベースの2剤併用化学療法を受けたⅣ期扁平上皮肺癌785人について、後ろ向き再評価した。131例が治療前後に空洞病変を認めた。通常のRECISTと病変の最長径から空洞の最長径を引いて評価病変を測定するmRESICTを使い奏効率、PFS、OSを比較した。Kaplan-Meierおよびlog-rank検定の方法を用いて生存曲線を作成検定した。重み付きκ統計は、観察者間の再現性の評価と奏効率の比較に使用した。カイ二乗検定でPD-L1発現と治療後の空洞化を評価した。プラチナベースの化学療法に免疫療法を併用した患者785人のうち、16.7%に肺病変の明らかな空洞化が認められた。mRECISTを奏効判定に用いた場合、RECIST v1.1よりも高い奏効率(66% vs 57%)が得られた。mRECISTは、PFSおよびOSに有益なキャビテーションを有する患者をよりよく同定する可能性がある。カイ二乗検定により、PD-L1発現と腫瘍空洞の間に有意に近い差が認められた。mRECISTを使用した場合の腫瘍空洞評価の観察者間での再現性は許容範囲にあった(mRECIST基準の重み付けk係数は0.821)。ベースラインに空洞化の存在する扁平上皮肺癌はよくある。mRECISTは、これらの症例にRECISTよりも有意に高い奏効率を記録した。標的病変の体積評価に空洞化を含めることで、奏効率評価が改善する可能性がある。今回の結果は、RECISTをさらに修正し、免疫療法の有効性をより反映した情報となるかも知れない。
感想
データとして面白い視点です。空洞がある病変の場合、治療により空洞は変化せず腫瘍壁が薄くなる反応をする人がいます。そのような場合RECISTでは空洞を含めて腫瘍径として扱うため、効いていそうでもPRにならない場合があります。逆に空洞化し内部にエアが入っただけでPD判定になる場合もあります。日常臨床ではそのあたりを考慮しながら組み立てるので問題にならないですが、頻発する場合奏効率やPFSにズレが生じる可能性があります。このような場合に空洞を径に含めないことでより正確な評価が可能ではないか?というのが本論の仮説です。実際に空洞病変を生じやすいとされる扁平上皮癌全体でアウトカムを見たところ、奏効率改善、奏効程度別に見た場合により正確になったというのが結論です。また空洞を生じやすいのがPD-L1陽性例に多いというのも問題を大きくしているという指摘もされています。この論文の要はFigure3で、扁平上皮癌に限っては空洞が原因でSDからPRに格上げになる症例が10%ほどあるということを把握して置くことでしょう。つまりこれから論文を読む際に、「扁平上皮癌にレスポンスが悪い」というサブ解析が出たらこのような症例が含まれる可能性を疑いなさいということになります。