ALK陽性肺癌に対する術後補助化学療法

Alectinib in Resected ALK-Positive Non-Small-Cell Lung Cancer.

Wu YL et al.
N Engl J Med. 2024 Apr 11;390(14):1265-1276.
PMID:38598794.

Abs of abs.
切除可能なALK陽性非小細胞肺癌に対する術後補助療法として、プラチナ製剤の化学療法が推奨されている。術後補助化学療法とアレクチニブによる術後補助療法の有効性と安全性に関するデータはない。IB期(腫瘍4cm以上)、Ⅱ期、ⅢA期のALK陽性完全切除例を、アレクチニブ(600mgを1日2回)を24カ月間経口投与する群と、プラチナ製剤による化学療法を21日毎で4サイクル投与する群に1:1の割合で無作為に割り付け、国際共同第3相非盲検無作為化試験を行った。主要評価項目は無再発生存期間とし、まずⅡ期/ⅢA期、その次にITT集団といった順で検討した。その他として中枢神経系の無再発生存率、全生存率、安全性を評価した。計257例の患者がアレクチニブ投与群(130例)と化学療法群(127例)に無作為に割り付けられた。Ⅱ/ⅢA期の患者において、2年無再発割合は、アレクチニブ群で93.8%、化学療法群で63.0%であり(ハザード比0.24[0.13-0.45];P<0.001)、ITT集団ではそれぞれ93.6%、63.7%であった(ハザード比、0.24[0.13-0.43];P<0.001)。アレクチニブは、化学療法と比較して、中枢神経系無再発生存に関して臨床的に意味のある利益と関連していた(ハザード比0.22[0.08-0.58])。全生存期間のデータは未成熟であった。安全性に関する新たな情報はなかった。IB期、Ⅱ期、ⅢA期のALK陽性術後患者において、アレクチニブの術後補助療法はプラチナ製剤と比較して無再発生存期間を有意に延長した。

感想
術後補助化学療法は、本来であれば全生存期間で評価したいところです。しかし観察期間が長すぎるのとレスポンスを評価できないことからDFSが代替となります。分子標的治療ですのでADAURAと同じで、極端に開くDFS曲線となっています。安全性についても両群とも治療関連死はなく、アレクチニブ関連の重篤なもの(補遺表S5:肺炎、虫垂炎、心筋梗塞)も全例回復しており問題ないと言えます。症例設定で推定したハザード比は0.58で、これをはるかに上回る0.24なので、予想外に良い結果と言えます。このようにDFSについては文句のつけようのない結果ですが、論点はいくつか残ります。まず全生存期間が本当に延長されるか、つまり再発時にTKIを入れた場合とどう違うのか、次に2年間が最適な投与期間か、プラチナ製剤は本当に必要ないかについて研究を進める必要があると思います。また本来手術で治癒している人もいるはずなので、対象集団についてはctDNAなどでさらに絞り込む必要があるかもしれません。また今回のサブグループ解析では特に利益が高そうな集団は見つけられませんでした。ADAURAではDFSに関して、病期が進むほどオシメルチニブの利益がありそうに見えましたが、今回の結果はそうなっていません。偶然かもしれませんが、すっきりしない点です。