ALK-TKIはPD後もプラチナ+ペメトレキセドと併用した方がよい?

Efficacy of Platinum/Pemetrexed Combination Chemotherapy in ALK-Positive NSCLC Refractory to Second-Generation ALK Inhibitors.

Lin JJ et al.
J Thorac Oncol. 2019 Oct 26.[Epub ahead of print]
PMID:31669591

Abs of abs.
ALK陽性進行非小細胞肺癌についてはアレクチニブのような第二世代ALK-TKIが標準治療である。この治療が終わった後の次治療については確立しておらず、第三世代のロラチニブやプラチナ+ペメトレキセドによる抗がん剤治療が選択肢となる。第二世代TKIに耐性化した症例に対するプラチナ+ペメトレキセドの有効性については固まっていない。今回は3施設での後ろ向き研究である。第二世代TKIの一つ以上に耐性化し、プラチナ+ペメトレキセドの治療を受けているALK陽性進行非小細胞肺癌であれば適格とした。58人の患者が適格とされ、37人が測定可能病変を有していた。奏効率は29.7%[15.9-47.0]、奏効期間は6.4ヶ月[1.6-NR]、無増悪生存期間中央値は4.3ヶ月[2.9-5.8]であった。無増悪生存期間はプラチナ+ペメトレキセドだけを行うよりALK-TKIを加えた方が良かった(6.8ヶ月対3.2ヶ月 ハザード比0.33; P=0.025)。第二世代TKIに耐性化した症例に対するプラチナ+ペメトレキセドは中等度の有効性を示した。おそらくALK-TKIの併用により効果が高まるようであり、これはALK阻害を継続し続けた方がよいことを示唆する。

感想
ALK陽性に対してはアレクチニブが長期にわたり効果を発揮するため、その後の治療については残りのTKIを効果を見ながら使うことが多いでしょう。また耐性化も細かく分かれ、T790Mに相当するような主たる標的もなく、また測定系も確立していないのであまり再生検も積極的にされない面があります。ALK陽性肺癌にペメトレキセドが有効であることは広く知られているものの、これまでTKI後の同レジメンのまとまった報告がありませんでした。初回治療としては臨床試験の対照群(プラチナ+ペメトレキセド)にされている2試験、つまりASCEND-4[Soria JC Lancet2017 PMID:28126333]とPROFILE 1014[Solomon BJ NEJM2014 PMID:25470694]から伺い知ることができます。初回プラチナ2剤としてはPFS 8ヶ月程度で、従来より少し良いといった程度です。今回はTKI後で4.3ヶ月でした。初回治療でなくTKI後の場合、奏効率はあまり変わらないが、PFSが若干悪いのはEGFR遺伝子変異でいくつか報告がある通りです。今回の大きな示唆は、単に「プラチナ+ペメトレキセド」より「TKI+プラチナ+ペメトレキセド」が最適かもしれないという点です。Fig1に今回のwater-fall plotが載っています。点がついているのがTKIを併用した患者で、なんらかの縮小がみられている患者は9/10あり、30%以上の縮小を示したのは7/10でした。もちろん同じTKI併用もあり、ブリガチニブなどへの変更して併用もあり一概には言えません。耐性化機序の違いによる効果も気になるところです。しかしEGFR遺伝子変異では否定された「TKIの上に抗がん剤を乗せる」ことが、ALKでは違うかも知れないというのは新たな視点です。一方再生検あるいは血漿での遺伝子プロファイルの分析をされた症例もありましたが、あまり特定の方向は見いだせていません。また耐性後にALKが残っているかどうかも、PFSに関する限りあまり差がありませんでした。この検討がなされたのは、再治療のロラチニブの効果がALKが残っている人に高かった[Shaw AT JCO2019 PMID:30892989]という知見があったからでしょう。ただ保険上抗がん剤とアレクチニブは現時点では別々に使うしかありませんので残念なところです。