COVID-19 発症何日前から肺炎像が出るのか

Early Appearance of Coronavirus Disease 2019 Associated Pulmonary Infiltrates During Daily Radiotherapy Imaging for Lung Cancer.

Suppli MH et al.
J Thorac Oncol. 2020 Jun;15(6):1081-1084.
PMID:32283316

Outline
症例は74歳白人男性で喫煙歴あり、既往に高血圧と両側股関節形成術歴があり、肺腺癌T3N2M0と診断された。60Gy/30Frとプラチナ2剤による抗がん剤を予定された。放射線療法9回目に乾性咳嗽、倦怠感、筋肉痛でCOVID-19陽性と診断された。その3日後、重度の呼吸困難で入院し低酸素のため人工呼吸となった。最初の症状から6日後呼吸不全で死亡した。改めて記録していたコーンビームCTを見直すと、照射開始時に陰影の存在はなかったが、8日目には2個の斑状の浸潤影を伴ったすりガラス陰影が出現、9日目にはそれが広がっていた。つまり臨床症状発症の36時間前までには画像認識ができていたことになる。

感想
COVID-19の患者数は最近また増えてきており、地域によっては肺癌治療と両立を迫られている方も多いのではないでしょうか。COVID-19のPCRが充実するにつれて気管支鏡前あるいは術前ルーチン、リソースが許すところでは新規入院患者全員といったスクリーニングをされる施設も出てきています。発症2日前から感染力があるとされていますので、たまたま感染し発症していない人を捕まえるのは理屈上可能です。今回のコーンビームCTは正確な位置合わせをするための簡易CTのようなもので、不勉強で存在そのものを今まで知りませんでした。そのようなもので毎日CT記録があればCOVID-19発症の何日前から胸部陰影が出るかわかることになります。その答えが今回36時間前であったということになります。今回は照射早期にすりガラス陰影が出てきているのと、その後の急速な経過からCOVID-19の発症時を捉えていることに異論はありませんが、仮に50Gy程度で出た陰影であれば肺臓炎、もし重症化せずに改善していたら別の混合感染の可能性も否定できなかったと思います。無症状の人に毎日CTをとるわけではないので、発症時期を示すめったにない貴重な症例報告です。ちょうどドライブレコーダーの普及により決定的瞬間の記録が増えたことに似ています。
放射線治療についてもCOVID-19でどう行動するかの提言がいくつもなされています。できることは限られていますが、最新のもの[Liao Z LungCancer2020 PMID:32585497]では、治療室に出入りする人のスクリーニングを徹底する、治療を遅らせる、短縮できないかを検討する、hyperfractionを一日一回照射にすることを検討する、予防的全脳照射は抗がん剤治療中にできないか検討することが提案されています。