EGFR遺伝子変異陽性切除例にオシメルチニブは標準治療か?

Osimertinib Should Not Yet Be Considered the Standard of Care for EGFR-Mutant NSCLC in the Adjuvant Setting.

Uprety D.
J Thorac Oncol. 2021 Mar;16(3):371-374.
PMID:33641721.

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術後補助化学療法に関する無作為化試験のメタアナリシスによって5.4%の5年生存率の改善が報告されている。しかしフォローアップ期間が長いため代替指標としての無再発生存期間(DFS)の人気が高まっており頻繁に使用されている。メタアナリシスでは放射線療法の有無に関わらず、術後補助化学療法を受けたNSCLC患者におけるDFSとOSの間の強い相関が報告され、DFSがOSの代替指標となりうることが示唆される。しかしこれは殺細胞性抗がん剤についての話である。過去10年間にEGFR遺伝子変異陽性NSCLCでEGFR-TKIを使用した多くの研究が行われている。代表としてのCTONG1104試験は、外科切除を受けたEGFR遺伝子変異陽性肺癌Ⅱ期からⅢA期(N1–N2)のNSCLCに対し、ゲフィチニブまたはシスプラチンベースの化学療法に割り付けた無作為化第Ⅲ相試験である。この試験においてゲフィチニブ群のDFSが有意に延長していたものの、フォローアップにおけるOSの利益に還元されなかった。
これらの研究により、第1世代のEGFR-TKIは術後補助化学療法として使用された場合、DFSを改善するのがやっとでありOSの改善を証明するに至っていない。これは初期段階の腫瘍がドライバー変異に完全に依存していない可能性を示唆している。転移が見られる状態で効果があるレジメンが、初期段階でも効果を発揮するという仮定には注意が必要で、大腸癌の例もあり常に正しいとは限らない。
最近ADAURA試験の結果が報告された。これは、切除可能なⅠBからⅢA期のEGFR遺伝子変異陽性肺癌を、標準治療(手術±化学療法)を受けてから3年間、オシメルチニブかプラセボに無作為化した第Ⅲ相試験である。まず3年間のオシメルチニブについての理論的根拠が明らかではない。さらに脳転移の評価の詳細が明らかではない。
術後補助化学療法の目標は、微小転移を根絶することで治癒率とOSを改善することである。以前からオシメルチニブがDFSの改善する可能性が高いと見られており、微小転移が防がれているかどうかははっきりしない。また3年間のオシメルチニブによる治療は毒性を伴う。ADAURA試験では、オシメルチニブ群の46%に有害事象が見られた。3年間これらの苦痛を伴うことはQOLに大きく関わってくる。そしてオシメルチニブは高価であり、重大な経済的負担になる可能性がある。
資源は有限であり、高額な薬剤を3年間、明確なOSの延長を示すことなくかなりの数の患者に使うことは不合理である。現在のところオシメルチニブは必ずしも患者を「長生き」させるとは限らず、「画像上進行のない状態を長くする」するだけであり、導入にはもう少し正確な情報が必要である。

感想
JTOに掲載されたeditrialでのpro con討議です。今回は否定派の意見を要約しましたが、肯定派の意見[Remon J JTO2021 PMID:33641720]も並列されています。肯定派の結論は、薬剤負担、有害事象の欠点は認めつつも、オシメルチニブは治療はより強く、より早いほうが良いという考え方と一致している、OSデータがなくとも治療により再発と中枢神経系の進行リスクは大幅に低下することは明確になっており、標準治療として勧められるというものです。
要するに費用と効果、有害事象をどう見るかにかかっています。術後補助化学療法に関する議論がさらにややこしくなった印象です。この治療もおそらく日本で保険適応となるでしょうが、費用のみならず肺臓炎の問題、外科内科どちらが見るのかなどたちまち問題が噴出しそうです。私はどちらかといえば否定派の意見に近いのでこちらを要約しました。EGFR遺伝子変異陽性肺癌が中枢神経系転移が多いのでスクリーニング間隔を詰めることでQOL低下は防げますし、TKIで根治は不可能と思えることから、おそらくADAURA試験ではOSが有意にならないのではないかと思っています。ただCTONG1104に比べてサンプルサイズ(339人 vs. 343人)が大きいため、わずかに有意になるかもしれません。ADAURA試験を読んだ時には積極的に使いたいと思っていましたが、有害事象を多く経験しオシメルチニブに対する印象はかなり変わりました。ただ今のところ統計的有意の前にひれ伏すというEBM教が幅を効かせているので、今後説明する機会が増えることは間違いありません。