EGFR+での腫瘍微小環境は簡単ではない

The Impact of Tumor Immune Microenvironment in EGFR-Mutant Non-Small Cell Lung Cancer on the Efficacy of Osimertinib.

Mizutani M et al.
Clin Lung Cancer. 2026 Sep 6;27(9):1-10.
PMID:42815097.

Abs of abs,
PD-L1、CD8陽性腫瘍浸潤リンパ球(CD8+TIL)、FOXP3+TILから構成される腫瘍微小環境と、EGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺癌の臨床病理学的特徴およびEGFR-TKIの有効性との関連については、依然として十分に解明されていない。今回は初回治療としてオシメルチニブまたはアファチニブによる治療を受けた患者を対象とし、PD-L1(22C3)の発現を陽性・陰性に分類し、CD8+TILの発現を免疫組織化学法により評価し、高発現・低発現に分類した。その後、PD-L1およびCD8+TILの状態に基づき、腫瘍免疫微小環境を4つのクラスに分類した:クラス1(陽性/高)、クラス2(陰性/低)、クラス3(陽性/低)、クラス4(陰性/高)。なおFOXP3+TILの発現も免疫組織化学法により評価した。腫瘍微小環境の各クラスと臨床病理学的因子との間には有意な相関は認められなかった。オシメルチニブPFSは、微小環境により異なっていた(PFS:クラス1,2,3,4:7.6ヶ月、17.7ヶ月、14.8ヶ月、34.0ヶ月;p=0.0019)。FOXP3+TIL高発現群では、低発現群に比べてPFSが有意に短かった(PFS中央値:8.3 対 18.1ヶ月、p=0.031)。多変量解析では、FOXP3+TILの高発現がPFSの短縮と独立して関連していることが示された(ハザード比2.28、p=0.019); クラス4では、PFSの延長と独立して関連していた(ハザード比0.28、p=0.004)。PD-L1およびCD8+TILの状態、およびFOXP3+TILの状態に基づく腫瘍微小環境分類は、EGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺癌におけるオシメルチニブの有効性を予測するのに役立つ可能性がある。

感想
EGFR-TKIによりかなり病勢進行している人でもある程度コントロールできることが多くなっています。しかし依然として効果が低い人が存在します。今回は初回治療のオシメルチニブの効果と、腫瘍微小環境との関連を調べた研究になります。PD-L1とCD8+TILで4分割して効果を見ています。4分割の元ネタ[Teng MW CancRes2015 PMID:25977340]ではタイプI(PD-L1陽性でTILがありが免疫抵抗性を誘導)、タイプⅡ(PD-L1陰性でTILが無く免疫無視)、タイプⅢ(PD-L1陽性だが、TILは無く内部から誘導されている)、タイプIV(PD-L1陰性でTILがあり免疫寛容を促進する他の因子がある)の分類で、今回これを踏襲しています。結論は治療前にすでに細胞障害性T細胞が寄ってきており、さらにPD-L1が低いこと(タイプⅣ、クラス4)がオシメルチニブPFSが良く(34.0か月)、逆にPD-L1が高くT細胞も寄ってきているクラス1が最も悪い(7.6か月)、他に制御性T細胞が少ないこともPFS延長につながるということです。個人的にはクラス2と3の差があまりない、つまりCD8+TILが低いとPD-L1が高くても低くても似たようなPFSである点が面白いと感じました。クラス2に対するクラス3のハザード比は0.73で、PD-L1陽性がむしろ不利に働いていません。適応免疫としてPD-L1が発現しているのであれば、T細胞が寄ってきていない場合、効果に差がないことは理解できます。しかしEGFR+ではintrinsicにPD-L1を発現しているとの説が優勢です。これらについては本文中ではあまり考察されていないようです。著者らはクラス1が悪い理由としてMET異常やPD-L1によるオートファジー誘導を挙げています。仮にMETとの相関があるのならば、MARIPOSAレジメンでこのグループがどう反応するのか興味深いです。
この研究ではPD-L1で分けた場合に差がついていませんが、PD-L1高発現でオシメルチニブのPFS短縮の報告はそれこそ山のようにあります。EGFR変異とPD-L1の関係は、原因結果入り混じった多くの事象が複合して見えていることであり、単純な解釈ができないのであろうと思います。