Updated Analysis From KEYNOTE-189: Pembrolizumab or Placebo Plus Pemetrexed and Platinum for Previously Untreated Metastatic Nonsquamous Non-Small-Cell Lung Cancer.
Gadgeel S et al.
J Clin Oncol. 2020 Mar 9:[Epub ahead of print]
PMID:32150489
Abs of abs.
進行非小細胞肺癌の初回治療例を対象に行われたKEYNOTE-189試験では、プラチナ+ペメトレキセド+ペムブロリズマブが全生存期間と無増悪生存期間の改善が認められた。今回はこのアップデートした結果を報告する。患者はランダムに2:1にプラチナ+ペメトレキセド+ペムブロリズマブ(n=410)か、プラチナ+ペメトレキセド+プラセボ(n=206)かに割り付けられ、維持療法としてのペメトレキセド+ペムブロリズマブ/プラセボを35コースまで継続された。プラセボ群の患者は病勢進行後ペムブロリズマブ単剤へクロスオーバーすることが可能であった。奏効についてはRECIST(ver1.1)基準とした中央判定で、今回のアップデートはアルファ消費は考慮されていない。フォローアップ中央値23.1ヶ月の段階で、全生存期間中央値は22.0ヶ月[19.5-25.2]対10.7ヶ月[8.7-13.6] 、ハザード比は0.56[0.45-0.70]となった。無増悪生存期間については9.0ヶ月[8.1-9.9]対4.9ヶ月[4.7-5.5]、ハザード比0.48[0.40-0.58]であった。またランダム化から次治療での病勢進行または何らかの死亡までのどちらかが起こるまでの時間(PFS2)は17.0ヶ月[15.1-19.4]対9.0ヶ月[7.6-10.4]、ハザード比0.49[0.40-0.59]であった。脳転移あるいは肝転移の存在、PD-L1発現にかかわらず全生存期間および無増悪生存期間の利益が観察された。グレード3-5の有害事象はペムブロリズマブ群で71.9%、プラセボ群で66.8%と差がなかった。今回の結果からプラチナ+ペメトレキセド+ペムブロリズマブが大きく全生存期間と無増悪生存期間を改善し、それはPD-L1発現や肝脳転移に関係なく毒性も管理可能であることが示された。
感想
PD-L1>=50%の群に関して、KEYNOTE-024試験では生存曲線がやや下に凸なのに対し189試験では緩やかな直線状に下がっていきます。初期のイベント(死亡)が少ないほど上に凸に近くなります。分子標的治療がこの典型です。TPS=1-49%も直線状であり、初期の死亡を減らす作用は間違いないところと思われます。ただこのあたりの評価は難しく、生存曲線の形そのものの優劣を判定する手法はないと思います。
今回のハイライトは肝転移/脳転移患者でどうかということにあります。肝転移を持つ集団での生存曲線は4ヶ月くらいまでは重なり、その後開く形をしておりハザード比は0.62でした。ペムブロリズマブを加えても効果がない集団も3割ほどいることが推定されます。一方脳転移を持つ集団では、生存曲線は最初から開いておりハザード比は0.41です。個数や大きさによっても大きく違うと思いますが、全体としてみた場合要旨で主張しているように、PD-L1発現や肝脳転移に関係なく効果は期待できると見ています。
今回の全体の全生存期間中央値が22.0ヶ月ということと、1年生存率が70%、2年生存率が約半分(45.5%)は覚えておき、日常臨床で目安とすべき数字と言えます。ドライバー変異陰性例は陽性例に比べ予後不良と認識されています。分子標的治療がなかった少し前まで生存期間中央値が1年であったことからすると倍増しているわけですから、仕事も増えるわけです。
余談ですが、この記事を書きながら昨年末に行われた肺癌学会で配られた60周年記念誌を見ていました。記念誌の類は積読になってしまうことが多いのですが、裏話なども載っており面白く読めました。まだ読まれていない方はご一読をお勧めします。