PACIFIC試験のアップデート;4年後でも1/3が再発せず

Four-Year Survival With Durvalumab After Chemoradiotherapy in Stage III NSCLC-an Update From the PACIFIC Trial.

Faivre-Finn C et al.
J Thorac Oncol. 2021 May;16(5):860-867.
PMID:33476803.

Abs of abs.
化学放射線療法後に病勢が進行していない切除不能Ⅲ期の非小細胞肺癌患者を対象とした第3相プラセボ対照PACIFIC試験において、地固めデュルバルマブ療法は、全生存期間(OS)の有意な改善と関連していた(HR=0.68[0.53-0.87];p=0.00251)および無増悪生存期間(HR=0.52[0.42-65];p<0.0001)。今回は最後の患者が無作為化されてから4年後のOSおよびPFSのアップデートを報告する。PD-L1発現がわかりPS0、1の患者を、年齢、性別、喫煙歴で層別化し、デュルバルマブ(10mg/kg)またはプラセボを2週間毎投与(12ヵ月まで)する群に2対1で無作為に割り付けた。ITT集団において、OSおよびPFSを層別化ログランク検定を用いて解析した。4年後のOSおよびPFS割合をKaplan-Meier法により推定した。無作為化された713名の患者のうち709名が、デュルバルマブ(473/476)またはプラセボ(236/237)を投与された。2020年3月20日時点で追跡期間中央値=34.2カ月(0.2-64.9)で、更新されたOS(HR=0.71[0.57-0.88]およびPFS(HR=0.55[0.44-0.67])は、主要解析結果と一致していた。デュルバルマブのOSの中央値は47.5カ月、プラセボは29.1カ月に達した。4年後の生存率は49.6%、プラセボ36.3%、4年後のPFS率は、それぞれ35.3%、19.5%であった。本試験では、化学放射線療法後にデュルバルマブを投与したところ、PFSおよびOSの改善が認められた。また、デュルバルマブに割り付けられた患者の推定49.6%が4年後に生存しており(プラセボは36.3%)、35.3%が無増悪生存していた(プラセボは19.5%)。

感想
今や完全にⅢ期抗がん剤+放射線療法の主役となった感のあるデュルバルマブの長期フォローアップのアップデートです。初出の論文と大きく変わるわけではありませんが、ポイントとしては4年後のPFS率は、35.3%、生存率はほぼ半数というところです。大まかには4年後でも1/3が再発せず、半分が生きているとつかんでおけばよいでしょうか。2012-13の全国のがん診療連携拠点病院の集計によると、Ⅱ期非小細胞肺癌の5年生存率が47.2%、Ⅲ期が25.3%です。時代のズレはありますが、今やⅢ期の切除不能例が、10年前のⅡ期の手術成績に匹敵すると言っては言いすぎでしょうか。個人的にはこの治療法は肺臓炎は厄介ですが、それ以外は非常に良い治療法と思っています。それだけに治療成績よりも2週間ごとの投与がなんとか延ばせないか、治療期間が短縮できないかが重要な臨床研究テーマです。実地臨床側としては、頻回来院となるため投与前の必要十分な採血項目はなにか、特に治療後半の胸部レントゲンの頻度などできるだけ無駄なく治療を完遂する方法、地味ですが地固め後のフォローアップ方法についてもルーチン化できると有難いです。PFSをみると、1年までは40%ほど急速に落ちますが、それ以降は年ごとに10%、5%、5%くらいの落ち方になります。これは最初の集団に対しての割合なので、デュルバルマブの1年間に4割再発、完遂すると2年目にそのうち2割、3年目にそのうち1割が悪化する計算になります。このような時間感覚を捉えておくと説明もしやすいのではないかと思います。