POSEIDON試験の違和感

Durvalumab With or Without Tremelimumab in Combination With Chemotherapy as First-Line Therapy for Metastatic Non-Small-Cell Lung Cancer: The Phase III POSEIDON Study.

Johnson ML et al.
J Clin Oncol. 2022 Nov 3:Epub ahead of print.
PMID:36327426.

Abs of abs.
オープンラベル第Ⅲ相試験であるPOSEIDON試験は、転移性非小細胞肺癌の初回治療としてのトレメリムマブ+デュルバルマブ+化学療法(T+D+CT)とデュルバルマブ+化学療法(D+CT)と化学療法単独(CT)を比較した試験である。EGFR/ALK野生型非小細胞肺癌(n=1013)を無作為に割り付けた(1:1:1)。投与方法はトレメリムマブ75mg+デュルバルマブ1500mg+プラチナ化学療法を21日間サイクルで最大4回行い、その後デュルバルマブを4週に1回、進行するまで追加投与する。またデュルバルマブ+化学療法を21日間サイクルで最大4回行い、進行まで4週に1回投与する方法。化学療法単独は21日間サイクル最大6回(ペメトレキセド維持投与がある場合もある)実施した。主要評価項目は、D+CT群とCT群のPFSとOSとした。主要なα制御を行った副次評価項目は、T+D+CTとCTのPFSおよびOSとした。PFSはD+CT vs CTで有意に延長した(ハザード比[0.74[0.62-0.89]; P=0.0009;5.5ヶ月 対 4.8ヶ月)。OSの改善傾向はあるものの有意でなかった(ハザード比0.86[0.72-1.02]; P=0.0758;13.3ヶ月 対 11.7ヶ月; 24ヶ月生存率、 29.6% 対 22.1% )。T + D + CTはCTに対してPFS、OSとも有意に改善していた。PFS(ハザード比0.72[0.60-0.86]; P=0.0003; 6.2ヶ月 対 4.8ヶ月)と OS(ハザード比0.77[0.65-0.92]; P=0.0030; 14.0ヶ月 対 11.7ヶ月、24ヶ月生存率 32.9% 対 22.1%)となった。 治療関連有害事象は、T+D+CT、D+CT、CTでそれぞれ51.8%、44.6%、44.4%で最大グレード3/4であり、治療関連有害事象により治療を中止した患者はそれぞれ、15.5%、14.1%、9.9%であった。D+CTはCTに対して有意にPFSを改善した。デュルバルマブと化学療法に限定してトレメリムマブを追加する治療は、追加の負荷をかけることなく、CTに対してOSとPFSを有意に改善し、初回治療における新しい選択肢となることが示された。

感想
ICI併用+化学療法の試験で、年末に承認を得ています。この試験は3群比較になっていますが、プライマリーエンドポイントはあくまでも「デュルバルマブ+化学療法 対 化学療法」のPFSとOSです。プロトコールによればこのPFSを1%、OSに4%のαを割り振り、どちらかが達成されれば余ったαを副次評価項目に再利用するということになっています。PFSはもともと0.01を有意水準しているので、単純計算するとD+CT vs CTでP=0.0009、さらにT+D+CTvsCTのPFSがP=0.0003、さらにOSのP=0.0030で3つの合計0.0042<0.01という理屈でしょうか?これは私の理解なので、いずれメーカーさんに確かめて見たいと思います(間違っていたら訂正します。もしお分かりの方がいればコメントください)。私が一番納得できないのは、プライマリーエンドポイントのOSがmetしないのにセカンダリーがmetしたとする態度です。PMDAの最適使用推進ガイドラインも承認に合わせて改訂されていますが、この点には言及されていません。 よく言われるように有意でないエンドポイントについてのサブ解析を見ても間違えるので、そこをわかった上でFig3を見てみます。結局OSの足を引っ張ったのはPD-L1<1%の集団ではないかと思います。またFig4からは一番強調したいであろうこととして、非扁平上皮癌においてT+D+CT > D+CTに見えますがOSは17.2ヶ月対14.8ヶ月と3ヶ月の改善もありません。ここまでの流れでお分かりのように、私はこのレジメンに関しては少し様子を見ようと思っています。年々齢をとりひねくれた見方が出てきたのかも知れません。