標準治療後の小細胞肺癌に対するペムブロリズマブ、期待は持てそうだが…

Pembrolizumab After Two or More Lines of Previous Therapy in Patients With Recurrent or Metastatic SCLC: Results From the KEYNOTE-028 and KEYNOTE-158 Studies.

Chung HC et al.
J Thorac Oncol. 2019 Dec 20.[Epub ahead of print]
PMID:31870883

Abs of abs.
ペムブロリズマブは既治療の再発転移小細胞肺癌に対して有益であることが、KEYNOTE-028試験およびKEYNOTE-158試験で示されている。これらの2つの試験を統合解析し、特に3次治療以降のケースについて検討した。適格基準は18歳以上、組織または細胞診で小細胞肺癌と診断されており根治不可能な再発転移例で、PS1以下、2ライン以上の治療を受けているものとした。なおKEYNOTE-028試験ではPD-L1陽性例が対象となっていた。治療としてペムブロリズマブをKEYNOTE-028試験では10mg/kg2週毎、KEYNOTE-158試験では200mgを3週毎に最大2年まで投与された。主要評価項目は独立判定の奏効率とした。83人が2レジメン以上の前治療を行っていた(KEYNOTE-028, n=19; KEYNOTE-158, n=64)。フォローアップ中央値は7.7ヶ月[0.5-48.7]で、奏効率は19.3%[11.4-29.4]であった。CRは2例(PD-L1陽性は1例)、14例(PD-L1陽性は13例)がPRであった。奏効期間中央値には到達せず、奏効した内の61%が18ヶ月以上の奏効持続が見られた。51人(61.4%)が何らかの有害事象を生じ8人(9.6%)がグレード3以上であった。本研究から2ライン以上の治療を受けた小細胞肺癌において、PD-L1発現にかかわらずペムブロリズマブは長期の抗腫瘍効果を示し忍容性も良好であった。

感想
KEYNOTE-028試験[Ott PA JCO2017 PMID:28813164]は、進展型小細胞肺癌対象の多コホートのphaseⅠb試験で、KEYNOTE-158試験はバスケット形式のphaseⅡ試験でサブセットを中心に報告されています。今回はこれらの中から3次治療以降としてペムブロリズマブを投与された症例が統合解析されました。現在小細胞肺癌に対する3次治療となると、初回にプラチナ+エトポシドあるいはイリノテカンを使用し、2次治療でアムルビシンを使用し、初回で使っていない方を3次治療で使用するのが基本の流れです。海外ではタキサン系の使用が考慮されます。進展型小細胞肺癌の予後は中央値で1年なく、3次治療はかなり追い込まれた局面です。そのような中で進展型でありながら脳転移なしが84.3%、PS0が30%とかなり選ばれた症例が登録されていることに留意し結果を見ていくべきでしょう。また本報告がなされたのも後付けであり、出版バイアス、つまり良かったから報告されるわけで、悪ければわざわざ報告されることはなかったでしょう。
さて奏効率は19.3%であり、この局面であれば良好と言えます。特筆すべきは、縮小効果が認められた16人において25.9ヶ月の奏効期間が得られたという点です。全体のPFSは2.0ヶ月、OS7.7ヶ月であり、縮小効果があれば長期奏効、なければあまり長期効果は期待できないようです。これまでの試験を振り返ると、CheckMate032試験[Ready N, JTO2019 PMID:30316010]では109人を対象とした3次治療でのニボルマブが試され、奏効率11.9%、奏効期間17.9ヶ月でした。その後2次治療におけるニボルマブを検討するためCheckMate331試験が行われ化学療法の比較が行われましたが、7.5ヶ月対8.4ヶ月と中央値で負け、奏効率も39%対47%で有用性を示せませんでした。またIFCT-1603[Pujol JL JTO2019 PMID:30664989]は2次治療での検討ですが、49人のアテゾリズマブ単剤の奏効率は2.3%と非常に失望する結果でした。それでもアテゾリズマブは初回のプラチナ2剤への上乗せでは効力を発揮するわけであり、現在進行中のペムブロリズマブ+プラチナ+エトポシドの結果が待たれます。結果があまり安定しない小細胞肺癌に対するICIですが、現時点で仮にペムブロリズマブ単剤の保険適応が下りた場合には一度試してみる価値はありそうです。