非扁平上皮非小細胞肺癌の標準治療の後

Real-world treatment patterns and outcomes of patients with metastatic nonsquamous non-small cell lung cancer after progression on standard-of-care therapy in the United States.

Divan HA et al.
Lung Cancer.2023 May;179:107177.
PMID:37003208.

Abs of abs.
進行非扁平上皮非小細胞肺癌において、標準治療で進行した後の治療選択のデータは少ない。今回は標準治療で1回以上病勢進行した後の治療と臨床転帰を調査した。2016年から2021年の間に治療を開始した患者について、データベースを解析した。1ライン以上の治療歴があり、ドライバー変異(EGFR、ALK、ROS1)がないものをコホート1、あるものをコホート2として調査した。アウトカムは、実地での無増悪生存期間(rwPFS)および全生存期間(rwOS)とした。コホート1および2には、それぞれ281人、109人の患者が入った。コホート1では、後治療は、ドセタキセル単剤(18.5%)またはドセタキセル+ラムシルマブ(32.4%)が最も多く使われていた。コホート2は、ほとんどがプラチナベースの2剤併用化学療法を受け、免疫療法を併用したのは22.9%、非併用は34.9%であった。RwPFSおよびRwOSの中央値は、コホート1では2.9カ月および7.2カ月、コホート2では3.2カ月および10.4カ月であった。コホート1におけるドセタキセルへのラムシルマブの追加、およびコホート2において化学療法への免疫療法の追加については生存期間の改善と目立った関連性は見られなかった。進行非扁平上皮非小細胞肺癌では、ドライバー変異のないものに対しては後治療としてドセタキセルを、ドライバー変異のあるものに対しては(1ライン以上のTKI治療の後に)プラチナベースの化学療法をよく受けており、これはガイドラインの推奨と一致していた。生存期間中央値は、逐次治療を行っても不良であり、より効果的な選択肢が必要である。

感想
米国におけるリアルワールドデータです。大したひねりもない設定ですが、臨床試験の結果を反映しているようで興味深いです。まずドライバー変異のないもののセカンドラインではドセタキセル+ラムシルマブの使用割合が高く、臨床試験ではドセタキセル単剤よりは良いとされており当たり前の結果のように見えます。しかしこのPFSは2.3ヶ月対2.6ヶ月とほとんど差がなく、OSに至っては両者6.1ヶ月と全く差が出ませんでした。実地臨床上ではラムシルマブの上乗せは状態が比較的良い患者に適応されるので、このレジメンはさらに割り引いて考える必要があると思います。ドライバー変異のあるコホート2のPFS中央値は3.2ヶ月でした。治療別に見た場合、プラチナ2剤+免疫療法を受けた患者のPFSは1.4ヶ月、プラチナ2剤だけでの4.7カ月と比べると散々です。EGFR陽性でTKIの後に稀にICIが効くことがありますが、全体としてみると全く振るわずで、プラチナ2剤の方がはるかに手堅いということになります。著者らはラムシルマブと免疫療法について。より大きいサンプルサイズならわずかな利益を示せるかも知れないと述べています。このわずかな差については最近私も感じるところで、肺癌では臨床的に意味のある差はどれくらいかという議論が進んでいません。つまり2群の差よりもP<0.05が金科玉条のごとく扱われています。症例数が少なければ、意味のある大きな差が出てもP値大きく無視されるかも知れません。しかしよいデータは繰り返し確認できるでしょうし、逆に少ないサンプル数で繰り返し確認できる差は尊いと思います。今回の論文から臨床的に日常的にやっていることもきちんと振り返ることを学びました。