ブリガチニブの実地データ

Real-world treatment outcomes with brigatinib in patients with pretreated ALK+ metastatic non-small cell lung cancer.

Popat S et al.
Lung Cancer. 2021 Jul;157:9-16.
PMID:34051652.

Abs of abs.
次世代ALK阻害剤であるブリガチニブは、ALK阻害剤未使用のALK陽性進行非小細胞肺癌患者およびクリゾチニブの前治療歴のある患者への投与が認められている。第Ⅱ相試験では、クリゾチニブの前治療で進行したALK陽性の転移性非小細胞肺癌患者において、ブリガチニブの有効性が示された(奏効率56%、PFS中央値16.7カ月、OS中央値34.1カ月)。今回、実地臨床におけるALK阻害剤再投与のALK陽性非小細胞肺癌を対象としたブリガチニブのUVEA-Brig試験の最終データを報告する。UVEA-Brigは、イタリア、ノルウェー、スペイン、英国で行われブリガチニブが投与された患者の後ろ向き検討である。対象は、脳病変を含むALK陽性の非小細胞肺癌で、1種類以上のALK阻害剤に抵抗性または不応となったもので、PS3以下の患者であった。患者はブリガチニブ90mgの7日間の導入期間が設けられ、その後180mgを1日1回投与された。主目的は、臨床背景、広がり、使用した治療レジメン、臨床転帰を知ることにあった。104人の患者(男性43%、年齢中央値53[29-80]歳、PS=0/1/2/3:41/41/10/5%、脳転移63%)を解析した。患者はブリガチニブ投与前に、中央値で2[1~6]レジメンの全身療法を受けており(37.5%は3レジメン以上)、中央値で1[1~5]レジメンのALK阻害剤を含む治療を受けていた(クリゾチニブ83.6%、セリチニブ50.0%、アレクチニブ6.7%、ロラチニブ4.8%)。解析時点で77人の患者がブリガチニブの投与を中止していた。奏効率は39.8%、PFS中央値は11.3[8.6-12.9]カ月、生存期間中央値は23.3[16.0-未達]カ月であった。4人の患者が有害事象によりブリガチニブ治療を中止した。53人の患者がブリガチニブ投与後に治療を受け、42人がALK阻害剤(ロラチニブ、n=34)を使用していた。今回の実地データは、臨床試験に参加した患者よりも前治療が多いALK陽性m非小細胞肺癌患者においてもブリガチニブの活性と忍容性があることを示唆する。

感想
ヨーロッパでの研究です。現在進行ALK陽性肺癌についてはアレクチニブが主力となっており、背景が異なることに注意が必要です。患者数に比べALK阻害薬の承認薬は年々増加しており、しかもペメトレキセドの効果も高く、現時点でのゴールに達していると思っています。それでもアレクチニブ以外の薬の使い方や、治療順序が実地臨床データをもとに模索が続けられています。今回のデータを大雑把に把握すると、クリゾチニブを中心としたALK阻害薬を1-2剤投与された状態での、ブリガチニブの奏効率が40%、PFSが1年弱ということになります。レトロ研究のため毒性は拾われていませんが、もともとの主な毒性は下痢、CK増加、悪心、高血圧です[Camidge DR NEJM2018. PMID:30280657]。肝心のアレクチニブ後のデータは出されていませんが、どこかで試してみる価値はありそうです。薬価はアルンブリグ90mg×2=23196円、アレセンサが6737円×4=26948円と若干安くなっています。最近もアレクチニブを高齢者の導入しましたが、さしたる有害事象もなく、効果も高くアレクチニブだけは別格の印象です。