Outcome of Incidental Pulmonary Nodules in a Real-World Setting.
Vindum HH et al.
Clin Lung Cancer. 2023 Dec;24(8):673-681.
PMID:37839963.
Abs of abs.
肺癌の早期診断は生存率向上のため必要である。偶発見つかった肺結節(IPN)は早期肺癌の可能性があり、これに対する適切なフォローアップと管理が重要となる。しかし大きな医療資源を必要としている。今回はIPNを持つ患者のCTフォローアップの結果を、悪性確定および侵襲を伴う検査の割合、その後の経過の観点から検討した。大学病院で2018年から2021年に肺の針生検を受けたIPN CTフォローアップ対象患者を後ろ向き研究した。計4181人のIPN患者がCTフォローアップを受けた。このうち249人(6%)が肺がんと診断され、そのうち224人(90%)がIPNのフォローアップで診断された。患者の75%がⅠ期またはⅡ期と診断され、77.9%で根治可能であった。CT IPNフォローアッププログラムでは449人の患者がCTガイド下針生検を受けた。うち190例が悪性が出ず、これはIPN患者全体の4.5%に相当した。IPNフォローアッププログラムにおける肺癌の累積発生率は6%であった。IPNで侵襲を伴う検査を受けた場合に悪性腫瘍が発見される確率は55.7%で、肺癌が圧倒的に多かった。肺癌の大部分は、早期で根治可能な段階で診断されていた。
感想
実地に役立つデータです。何らかの理由でCTを取った際に結節が見つかることが良くあります。多くは1cm未満で「よくわかりませんのが指摘されたのでよろしく」と紹介されてきます。確定診断には外科生検が必要となりますが、結局大きくならないかフォローしているケースが多いと思います。このような結節が最終的にどうなったのかという報告になります。結局肺癌は6%程度の累積発症率で、9割以上は違うということでした。まず今回採用されているフライシュナー協会のガイドライン[MacMahon H Radiology2017 PMID:28240562]を見てみました。6㎜未満のGGNのフォロー必要なしとするなど割り切り感が強く、一方solidなものについてはリスクファクターによってフォローアップを分ける理詰めな面もあり一読に値します。今回発見の肺癌の大半がⅠ/Ⅱ期であったのはこのガイドラインの的確さを裏付けているように見えます。一方で引用文献[Borg M ActaOncol2022 PMID:36264585]にあるように早期肺癌のほとんどが偶然発見されたものであるというのは、CT検診がいかに大切であるかを物語るものです。しかし有名なNELSON試験[NEJM2020 PMID:31995683]で肺癌死亡率は、1000人年あたりCT検診で2.50人、対照群3.30人でした。この死亡率の減少を「わずか」と捉えるか「小さいが大きな成果」と捉えるかは今後の大きな方向性につながります。冒頭に小さな陰影の管理に大きな医療資源が必要との文言があり、その通りかと思います。CTを密に行えば管理すべき陰影は爆発的に増えるでしょう。すでに海外では肺結節フォロー専門クリニックもあるそうです[Souliotis K RiskManHeaPoli PMID:36777476]。トラブルを恐れてどんな小さな影でも自前でフォローするのは時代遅れなのかも知れません。