免疫療法導入後も、Sensitive/Refractoryの境目は90日で良いか?

Reconsidering the Cutoff Value for Sensitive and Refractory Relapses in Extensive-Stage SCLC in the Era of Immunotherapy.

Torasawa M et al.
J Thorac Oncol. 2024 Feb;19(2):325-336.
PMID: 37748690.

Abs of abs.
これまで再発小細胞肺癌は、化学療法終了から病勢進行までの期間が60日または90日をカットオフ値として「sensitive」または「refracotry」に分類されてきた。しかしながら、これらのカットオフ値は厳密な解析から導き出されたものではなく、現在の治療へそのまま適用できるかはよくわかっていない。今回は免疫併用療法承認前(ICI前コホート)と承認後(ICI後コホート)の後ろ向き多施設共同研究を実施した。対象は免疫チェックポイント阻害薬(ICI)耐性を伴う、または伴わないプラチナ製剤2剤併用化学療法後に2次治療を受けた進展型SCLC患者である。2次治療後の全生存に対する多変量Cox回帰モデルにて、両側p値が最小となる最適なカットオフ値を選択した。選択したカットオフ値の妥当性は、2重クロスバリデーションを用いて検証した。ICI前コホートは235例、ICI後コホートは98例であった。ICI前のコホートでの最適カットオフ値は59日であった(p=0.0001);2重クロスバリデーションを用いて計算したハザード比は1.31[0.95-1.82]であった。ICI後コホートで、60日と90日のカットオフ値を使って予後を予測することができたが(60日;p=0.002、90日;p=0.005)、最適カットオフ値は75日であった(p=0.0002)。その結果、「sensitive」または「refracotry」の二次治療後の全生存期間中央値はそれぞれ15.9ヵ月と5.0ヵ月であった(ハザード比=2.77[1.56-4.93])。今回これまで曖昧であった再発SCLCを分類するカットオフ値を明確にした。75日をカットオフ値とすることが、ICI導入後の予後を最も正確に予測する。

感想
非常に実践的な研究です。そもそも「sensitive/refracotry」は、半ば経験的に語られており、研究によって60日か90日かどちらかを取られるケースが多いです。その日数に大きな根拠はなく、これまでの臨床試験でも90日派が多かったように思います。2次治療もsensitveなら初回治療の再チャレンジが許容されます。このことに対しては、レジメン選択肢が少ないこともあり盲従している面もあります。Chemo-ICIの時代に入っていますが、今回はこれがまだ正しいのか?がテーマになっています。やったことはシンプルで進行までの期間を60日、90日で切ってみると予後ははっきり別れるものの、最適点は75日であることが判明しました。しかしICI導入によりカットオフポイントが真に変化したのかはさらなる検討を要します。ただ治療選択肢が多くない中で、だからどうする?という問題は依然として不透明です。これはエディトリアルでも指摘されています。今後T細胞エンゲ―ジャーなど強力な2次治療が発展すれば、あまり問題にならなくなる可能性もあります。
余談ですが75日といえば「人の噂も…」とか株の長期トレンドの「75日移動平均線」というのがあります。つまり短期か長期かの境目として、人間がしっくりくるポイントの一つなのかも知れません。