ICI治療における心血管イベントの発症率

Real-world burden of cardiovascular events following immune checkpoint inhibitor therapy: impact on mortality and treatment resumption in 29,503 patients.

Rigaux C et al.
Lung Cancer. 2026 Epub 2026 Jun 14.
PMID:42302339.

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免疫チェックポイント阻害剤はがん治療に革命をもたらしたが、まれに重篤な心毒性を引き起こすことがある。広義の心血管イベントの実臨床における発生率や影響については、依然として十分に解明されていない。本研究の目的は、ICI療法後の心血管イベントの実臨床における発生率を評価し、予測バイオマーカーを探索するとともに、治療中断の影響を評価することである。:Optum社の匿名化されたMarket Clarity Dataを用いた後ろ向き観察研究を、あらゆる種類のがんに対してICI療法を受け、最低6か月の追跡期間を有する29503人の患者を対象に実施した。心筋炎、不整脈、左室駆出率の低下(LVEF < 50%)を含む心血管イベントを分析した。カプラン・マイヤー生存曲線を用いて、これらのイベントの発生時期を評価した。NT-proBNPやトロポニンなどのバイオマーカーについて、その予測価値を評価した。ICI治療を受けた29503人の患者のうち、27.6%が追跡期間(2年間)中に心血管イベントを発症した。ICI療法開始前に心血管疾患を既往としており、心保護療法を受けていた患者では、心血管イベントのリスクが高かった(35%対20%、p<0.001)。心血管イベントを発症した患者の死亡率は有意に高かった(39%対25.4%、p<0.001)。トロポニンおよびNT-proBNP値の上昇は、死亡率の上昇と関連していた(p<0.001)。ICI治療を受けている患者、特に既存の心疾患を有する患者において、心血管イベントは頻回に発生する。トロポニンおよびNT-proBNP値の上昇は、ICI治療後の心血管イベントを予測する有用なバイオマーカーとなり得る。今回の知見は心血管イベントによりICI治療が有意に多く中断されており、死亡率が上昇していることを示している。これらは、バイオマーカーに基づくリスク層別化ができること、また治療の維持のために腫瘍内科医と心血管腫瘍内科医との連携を支持するものである。

感想
この研究では心血管イベントとして心臓病理学的イベント(心筋症、心膜炎、心筋炎、心停止、収縮期心不全、拡張期心不全、虚血性心疾患、血栓塞栓症、痙攣を伴う狭心症、二次性肺高血圧症)、不整脈、LVEF<50%、心機能調整としてのACEI/βブロッカー新規投与、プレドニゾロン使用と定義しています。観察期間は2年間で、17%が1回以上の不整脈が出ており、7%にLVEF<50%が見られました。最初のイベント発生までは100-150日でした。もう少し細かく見ると心臓病理学的イベントが147日(SD=140.4)、LVEF<50%が110日(SD=130.5)でした。これは臨床的には重要な情報で3ヵ月経ったら一度心機能評価を考えるべきと言い換えられます。またもともとの心血管合併症を持つ患者では発症リスクが高く、NT-proBNP値が3ng/ml(3000pg/ml)以上ではさらに死亡率が高くなるというデータです。実地の感覚としても、心機能低下はICI開始直後におこるものではなく、また2年近くたってから起こってくるものでもないと感じます。ベースラインと3か月程度で、心電図、心エコー、NT-proBNP測定は理にかなった対策と考えられます。