T細胞エンゲ―ジャー、第Ⅱ相でも有望な結果

Tarlatamab for Patients with Previously Treated Small-Cell Lung Cancer.

Ahn MJ et al.
N Engl J Med. 2023 Nov 30;389(22):2063-2075.
PMID:37861218.

Abs of abs.
DLL3とCD3を標的とする二重特異性T細胞エンゲージャー免疫療法であるタルラタマブは、既治療小細胞肺癌を対象とした第1相試験で効果を示した。今回の第2相試験では、既治療小細胞肺癌を対象に、タルラタマブを10mgまたは100mgの用量で2週間毎で投与し、抗腫瘍活性と安全性を評価した。主要評価項目は、独立中央審査により評価された。全体で220例の患者にタルラタマブが投与された。前治療の中央値は2ラインであった。追跡期間中央値は、10mg群で10.6ヵ月、100mg群で10.3ヵ月であった。奏効率は10mg群の40%[29~52]、100mg群の32%[21~44]であった。奏効した患者において、6ヵ月以上の奏効期間があるものは59%(68例中40例)であった。データカットオフ時点において、10mg群で40例中22例(55%)、100mg群で28例中16例(57%)が投与継続中であった。無増悪生存期間中央値は10mg群で4.9ヵ月[2.9-6.7ヵ月]、100mg群で3.9ヵ月[2.6-4.4ヵ月]であり、9ヵ月における全生存期間はそれぞれ68%、66%であった。有害事象はサイトカイン放出症候群(10mg群51%、100mg群61%)、食欲不振(29%、44%)、発熱(35%、33%)であった。サイトカイン放出症候群は主に1サイクル目に発現し、ほとんどの患者がGrade1か2であった。グレード3のサイトカイン放出症候群は100mg群(6%)よりも10mg群(1%)の方が少なかった。治療に関連した有害事象のためにタルラタマブを中止した患者の割合は3%と低い確率であった。既治療小細胞肺癌において、タルラタマブ10mgを2週間ごとに投与すると、持続的な奏効を伴う抗腫瘍活性を示し、生存アウトカムも有望であった。新たな安全性情報は確認されなかった。

感想
つい先日も取り上げた薬です。大規模な第Ⅲ相試験が掲載されることが多いNEJMで、第Ⅱ相試験の結果が載ったということはこの薬の期待が大きいことを示しています。非常に短いPFSしかなかった再治療の小細胞肺癌で、新薬の4.9ヶ月は有望と言えます。考察にもあるように既存薬(トポテカン、アムルビシン、ルビネツテジン)との比較第Ⅲ相試験が、OSをエンドポイントとして700例規模で2023/5月から始まっているようです。
今回の10㎎群のOSが14.3ヶ月で、10年ほど前にグローバルで行われた再治療のトポテカン対アムルビシン[Pawel J JCO2014 PMID:25385727]では、OSがそれぞれ7.8ヶ月対7.5ヶ月でした。他の試験を見てもトポテカンは7ヶ月でも良い方なので、今回の結果が真実なら第Ⅲ相は早めに有効中止になるかも知れません。
ただし新しい有害事象もあります。サイトカイン放出症候群は広く知られていますが、免疫エフェクター細胞関連神経毒性症候群(ICANS)はこれまで肺癌治療では見ていない有害事象です。移植免疫分野で知られており、10㎎群で11人(8%)、100㎎群では24人(28%)に発生しています。症状は混乱、集中力低下、振戦などです。調べたところこのサイトがわかりやすかったです。余談ですが今回の薬はDLL3とCD3の2重特異抗体で、DLL3をいろいろ腫瘍発現抗体に変えることができれば非常に多彩な創薬が可能に見えます。