EGFR遺伝子変異陽性例に脳転移局所療法の利益は証明できず

Osimertinib and Stereotactic Radiosurgery for Brain Metastases in EGFR-Mutated Lung Cancer: The STARLET Joint Analysis of OUTRUN and LUOSICNS Randomized Trials.

Lee CK et al
J Thorac Oncol.2026 May;21(5):103549.
PMID:41534788.

Abs of abs,
無症状のEGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺癌における脳転移に対し、ガイドラインでは、初期治療としてオシメルチニブ単剤療法が推奨されている。しかし無作為化試験によるエビデンスは不足している。今回は、この患者集団において、初期治療としての定位放射線治療(SRS)+オシメルチニブとオシメルチニブ単剤の有効性および安全性を、2つの無作為化第Ⅱ相試験(OUTRUNとLUOSICNS)を行い評価した。SRSが適用可能な脳転移が10個以下の被験者を、SRS後にオシメルチニブ(80mg/日)を投与する群とオシメルチニブ単剤療法群に1:1の割合で無作為に割り付けた。SRSは単回照射または分割照射として実施した。主要評価項目は12ヶ月頭蓋内無増悪生存期間(ic-PFS)とした。副次評価項目として、全生存期間、頭蓋内進行のパターン、安全性である。両試験のデータは、前向きであり統合解析された。全体で79名の患者が無作為化された。追跡期間中央値39.0ヶ月時点で、SRS+オシメルチニブ群(n=39)とオシメルチニブ単剤療法群(n=40)の間で、12ヶ月ic-PFSに有意差は認められなかった(11%[-10%-32%]、p=0.31; ic-PFSの中央値は21.9ヶ月対17.2ヶ月)。全生存期間の中央値は、46.1ヶ月対29.1ヶ月であった。頭蓋内進行を認めた患者のうち、SRS+オシメルチニブ群では35%、オシメルチニブ単剤療法群では57%が進行時にSRSを受けた。SRS+オシメルチニブ治療を受けた被験者の5%にグレード3/4の放射線壊死が認められた。EGFR遺伝子変異陽性の脳転移を伴う非小細胞肺癌において、オシメルチニブに初期段階でSRSを加えても、12ヶ月間の脳内無増悪生存期間(ic-PFS)は有意に改善はなかった。これは、症状が軽微で脳転移の病変数が少ない患者において、初期治療としてオシメルチニブ単剤療法を用いることを支持する初の無作為化試験によるエビデンスである。

感想
症例集積が悪かったため2つの試験を統合して解析した研究です。EGFR遺伝子変異陽性例の治療前に、無症候性の脳転移が見つかることは頻繁に経験されます。これに対して放射線治療を行うべきかTKIを先行し反応を見るべきかは議論が続いています。TURBO-NSCLC研究[Pike LRG JCO2024 PMID:39047224]では、SRS先行により頭蓋内病変の局所制御が改善されることが示唆されています。あまり変わらないというデータもあり見解は一致していません。経験的に脳病変が小さく無症状ならTKI先行としている施設が多いと思います。
今回の試験はSRS追加群での12ヵ月頭蓋内PFSがTKI単独より上回ることを証明しにいった試験です。症例数が減ったこともあり試験としてはPFSの有意な延長を示せずnegativeです。細かいことをいうと本試験の解釈は「SRS+オシメルチニブが良いとは結論できなかった」というべきであって、いくら実情がそうであっても「TKI単剤の使用を支持するエビデンス」とは言えません。この辺りは厳しくチェックされますので、NEJMやLANCETでこの結論の言い回しでは掲載されません。
しかし臨床疑問に答えようとした重要研究であることに変わりありません。全例SRS先行の利益は否定できないものの、現時点では、特に大きいもの(今回のサブグループ解析では19㎜以上)や何らかの症状があるものについては局所療法を先行して行う方針でよいと思います。つまりこの議論は依然として不明で、今までとなんら変わらないということです。