TKIと殺細胞性抗がん剤併用の再現性

Gefitinib Versus Gefitinib Plus Pemetrexed and Carboplatin Chemotherapy in EGFR-Mutated Lung Cancer.

Noronha V et al.
J Clin Oncol. 2019 Aug 14:[Epub ahead of print]
PMID: 31411950

Abs of abs.
EGFR遺伝子変異陽性の進行非小細胞肺癌における初回の標準治療は経口チロシンキナーゼ阻害薬である。これにカルボプラチン+ペメトレキセドによる化学療法を加えた場合良好な予後が期待できるかもしれない。今回のランダム化第Ⅲ相試験では、EGFR感受性遺伝子変異陽性でPS0-2、進行非小細胞肺癌で未治療の患者を対象とし、ランダムにゲフィチニブ250㎎連日経口内服と、カルボプラチン(AUC5)+ペメトレキセド(500mg/m2)を4サイクル、引き続き維持療法としてペメトレキセドを継続する一連の治療を上乗せする群とに割り付けられた。プライマリーエンドポイントは無増悪生存期間、副次項目として全生存期間、奏効率、毒性とした。2016-2018年に350人がランダムにゲフィチニブ176人とゲフィチニブ+抗がん剤174人に割り付けられた。21%がPS2で18%に脳転移があった。生存追跡期間中央値は17ヶ月で、奏効率はゲフィチニブ+抗がん剤群75%とゲフィチニブ群63%であった。無増悪生存期間は16ヶ月対8ヶ月(ハザード比0.51[0.39-0.66];P<0.001)、全生存期間は未到達対17ヶ月(ハザード比0.45[0.31-0.65];P<0.001)であった。グレード3以上の毒性は51%対25%であった。今回の結果からゲフィチニブにカルボプラチン+ペメトレキセドの抗がん剤を上乗せすると無増悪生存期間、全生存期間を延長するものの毒性も増加することが知られた。

感想
周知の通り同様の試験が日本からNEJ009としてASCO2018で発表されています。つまり本試験はインド版NEJ009です。NEJ009での全生存期間中央値は、ゲフィチニブ群38.8ヶ月、ゲフィチニブ+カルボプラチン+ペメトレキセド群が52.2ヶ月と報告されています。NEJ009はPS0-1が適格で、今回の論文の試験ではPS2まで許容されており、その割合は21%と少なくありません。またわずかですがG719XやL861Q、さらにT790Mがもともとある症例も含まれています。無情にもT790Mがありながら、ゲフィチニブ群に登録されている人もいます。このような点を踏まえて本試験を見ていく必要があります。また本文中にはPFSの差が、OSの差にtranslateされていると書かれていますが、単純に解釈できないことも共通認識になっていると思います。PFSについては、特にゲフィチニブ群では後治療の1剤を加えた2剤でのPDまでの期間、すなわちPFS2をみていく必要があることは論を待たないと思います。今回のゲフィチニブ群のPFS2は14ヶ月と、併用群のPFS1の16ヶ月(PFS2は23ヶ月)と数字上は似ています。NEJ009でのPFSはゲフィチニブ群(PFS2)20.7ヶ月、併用群(PFS1)20.9ヶ月でした。ただOSが大きく開いており、この点もNEJ009とよく似ています。この理由については後治療や、腫瘍縮小の差などいろいろ言われていますがよくわかっていません。なおオシメルチニブの使用率は、ゲフィチニブ群11%、併用群15%と大差はありませんでした。したがって初回治療での足したPFSは変わらず、理由はよくわからないものの予後延長が2回確認されたことになります。私はこの2つの試験を見て、オシメルチニブには日本人には肺臓炎が多いことが気になっていることもあり、初回治療として手堅いNEJ009レジメンを勧めたいと思っています。ただ臨床試験以外ではほとんど使われていないこともあり、変わったことをする勇気もなく躊躇しています。2018年肺癌診療ガイドラインでは推奨度2であり、この試験が加わることで今後変わる可能性はあるのでしょうか?