PD-L1陰性例の抗がん剤+免疫療法は臨床試験よりかなり生存が悪い

Pembrolizumab Plus Chemotherapy Per PD-L1 Stratum In Patients With Metastatic Non-Small Cell Lung Cancer: Real-World Effectiveness Versus Trial Efficacy.

Verschueren MV et al.
Clin Lung Cancer. 2024 Mar;25(2):119-127.
PMID:38246791.

Abs of abs.
肺癌に対する治療効果は臨床試験と実臨床では異なることがある。本研究では、転移性非小細胞肺癌におけるPD-L1別のペムブロリズマブ+化学療法の初回治療の実臨床での生存成績を評価し、臨床試験結果と比較した。2019年1月1日~2021年12月31日の間にオランダの教育病院7施設でペムブロリズマブ+化学療法の初回投与を受けた非扁平上皮および扁平上皮肺癌の全患者を対象とした。全生存期間および無増悪生存期間のハザード比を推定し、PD-L1で層別化し、実臨床と臨床試験の間の効果差分(EEギャップ)を決定した。非扁平上皮コホート(n=486)は、PD-L1 1%未満269人、PD-L1 1%~49%158人、PD-L1 50%以上59人であった。扁平上皮コホート (n=117) は、PD-L1<1%70人と PD-L1≧1%47人であった。全生存については、PD-L11%未満の非扁平上皮癌でEEギャップが観察された (ハザード比1.38[1.06-1.78]; OS 中央値 10 対 17.2 か月)、他のすべての非扁平上皮および扁平上皮コホートではハザード比が一貫して1以上であった。 PD-L1別のPFSのEEギャップはどこも観察されなかった。PD-L1発現が1%未満の非扁平上皮肺癌を除き、ペムブロリズマブと化学療法の併用療法に有意なEEギャップは認められなかった。これらの患者では、実臨床での生存期間は臨床試験と比較してかなり短かった。どの背景因子が差に関与しているのか追加研究が必要である。

感想
KEYNOTE-189レジメン施行の実地データを集積し、Sq、non-SqとPD-L1別にPFSとOSを見たデータです。直球な解析ですが、KEYNOTE-189の生データ?との比較がされており信頼度が高くなっています。KEYNOTE-189の本試験個別データ入手については何も情報がないですが分析を見る限り、おそらく生データを入手したものと思われます。最近はグラフからデータを生成するソフトもあり、手間をかければ生データに近いものも生成できます。それはともかくとして、実地と臨床試験のデータの乖離はしばしば問題になります。それが真の差に基づくものか、偶然なのかは知るべくもなく、「質の高い」とされる臨床試験のデータを、口の悪い言い方をすれば金科玉条のごとく振り回すのがEBMです。今回得られたのは「PD-L1<1%のnon-Sqにおいて臨床試験より生存が悪い」ことが唯一の結果です。この集団のPFSは変わらないことから、まず後治療による差が考えられます。それについては、実地ではわずか16.7%しか受けていないのに対して、臨床試験では全体としてですが、44.6%が後治療を受けていました。また治療強度に関しても、早期に免疫療法が中止されており、PD-L1が低いことで主治医が免疫療法をあまり当てにしていなかった可能性が考えられます。本文では言及されていませんが、全体的に打ち切りが多く未成熟なデータであるのと、PD-L1のどの層でも生存曲線を見る限りはPFSはあまり変わらず、実地のOSが悪いように見えます。臨床試験は厳しい登録基準があり、元の状態の違いでこれくらいの差はむしろ普通に思えます。KEYNOTE-189レジメンについては弱点が少なく現在最も頻用されています。そうであってもPD-L1陰性例にどこまで免疫がいるのか、あるいはPD-L1>75%の超高発現にどこまで抗がん剤がいるのかどうかも継続して議論すべき課題です。